嘘だろッ!6 嘘だろッ目次 |
「久野君、君は人の口の滑った温かさ、自分の物を包まれる安堵感、そして、女性器にはない蠢く舌の存在の素晴らしさを実感したことがないのですね…可哀想に」 「そんなこと、可哀想でも何でもありません! 変な同情やめて下さい。バカバカしい。第一女性相手ならともかく、なんで俺が咥えるんですか? 天道寺さんはゲイですか?」 「どうだろう。両方好きになるからバイですね。まあ、知らない久野君に何を言っても理解できないかもしれませんが、気持ちいいことに男女差はないですから。深く考えすぎなんです」 こんなこと、浅く考えてどうするんだよ! 「たかが、処理ですから。久野君は自分で処理しないのですか? いくらなんでも、するでしょ?」 「それは…しますけど」 なんで俺オナニー報告してるんだ…? 「手ですか?」 「そうですけど」 「同じことですよ。手が口に変わっただけ。自分の口でするには体位がきついから、お手伝いをお願いしているだけのことです」 だからといって、俺が咥えなくてもいいじゃないか? 男のナニをはいそうですか、って咥えられるかよう… 「でも、本当に、俺、そういう趣味じゃないんです! 勘弁して下さい」 頭を下げた。 「無理です」 天道寺が一言、しかもその言葉だけはやけに強い口調で言った。 「今日の手伝いは君から言いだしたことですけど、この手伝い自体は、そのうちお願いするつもりでいました。契約条件覚えていますよね?」 契約条件は、他人を入れないことと、天道寺が手伝いを求めたらすることだった。 えっ、手伝い? 手伝いって…まさか… 「俺の手伝いをするってことが入ってましたよね? 俺が久野君に手伝って欲しいことといったら、性欲処理しかありませんので。掃除洗濯も自分でした方が早いですし、家事は好きな方ですし、料理は趣味です。唯一人に手伝ってもらいたいなと思うのがこれです」 「契約時にそんなこと一言もいわなかったじゃないですか!手伝いっていったら、普通にお手伝いでしょ!」 「普通って、何ですか? 誰が線引きするのですか? 内容を確認しなかったのは、久野君のミスだと思いますが? それに、」 「それに?」 「ここを追い出されて、行くあてはあるのですか? お金無いのでしょ? 部屋借りるのに幾ら掛かるかご存じですよね。しかも家財道具もない。幾ら営業だといっても、一ヶ月の給与だけで、部屋の敷金礼金から、住むのに必要な道具は買えないですよね。それとも、消費者金融にでも借金作りますか?」 現実だった。俺には此所を出て暮らすだけの余裕が全然なかった。 頼みの給与も今月分はまだだ。それに、ここの家賃も待ってもらっている身だ。 悪魔が微笑んだ。俺の目にはハッキリと悪魔の尻尾が見えた。 「身体の一部を俺に貸すだけで、食事付き二万の暮らしです。悪い話ではないですよね、久野君?」 プライドを取るか、金と生活を取るかの話じゃないか。 なら、ここは… 「…お手伝いさせていただきます」 俺は迷うことなくプライドを捨てた。 「良かった。久野君が頭の良い人で本当に嬉しいです」 キラキラと濡れた髪が光り、耳のピアスが輝き、そして、悪魔は顔に笑みを浮かべていた。 ああ、悪魔の尻尾が揺れいている。 違った…天道寺の一物が目の前で左右に揺れた。 「では改めて、目を、あ、もう閉じなくても大丈夫ですね。口を開けて下さい」 うっ、俺のプライド…男の性器を思うから葛藤するんだ。こんなもの、太いソーセージだ。 美味しくないソーセージだ。でも…そう思い込むのに視界は邪魔だった。 「目は閉じたいです。駄目ですか?」 「そうですね。今日はそれでいいとしましょう。ちゃんと鼻で呼吸して下さいね。先程ので分かったと思いますが、コレ、結構太いですから」 天道寺が自分の先端を指で軽く弾いた。 「それと、出したら飲んで下さい。味の保証は俺の作る料理と違って出来ませんが、吐き出されるのは好きではないので」 飲むのか? 男の精液を?? 男の俺が? 嘘だろ?? どんな味がするんだ? ミルクのような甘さはないよな…匂いからしてマズイってことは想像できる。 タンポポの茎のミルクとどっちがマズイのだろう。 あれは子どもの頃、本当にミルクだと思って舐めて失敗した。 もの凄く苦かった…あれ以来どうも白っぽいものは牛乳以外駄目だ。 豆乳も飲めないのに…精液か… 誰か冗談だと言ってくれ〜〜〜〜! 誰かというより、天道寺、冗談と言えっ! 心の叫びは虚しいだけで終わり、俺は「は〜っ」と深呼吸してから口を開けた。 両目をしっかり閉じ、俺は今から美味しくないソーセージを口に頬張るんだと自己暗示をかけた。 |