嘘だろッ!59 嘘だろッ目次


 天道寺が箱の蓋を開けた。変なベルトのような物を取りだした。

「これを付けて会社に行って下さい」

 尻を左右に割られた。

「大丈夫です。痛くないと思います。昨日も散々したので、柔らかいままですから」

 天道寺の指が俺の入口(本当は出口だけど)をなぞる。

「それって…」
「拓巳用に作ったプラグ付きの貞操帯です」
「プラグって何?」
「栓です。栓をして、ベルトで固定します。真司対策です」 

 首を曲げ、天道寺の手元を注視すると、ベルトから、突起物が生えているように見えた。
 嫌な予感がする。

「栓って…つまり…」
「大丈夫です。モーターとか付いてませんから。嵌め込むだけです。拓巳、自分の身は自分で守るに越したことはありませんが、万が一ってこともあるでしょ? これを嵌めている姿を見れば、ヤツも変な気を起こさずに済みますから」
「…うっ!」

 腰を起こせば良かったんだ。
 そうすれば、そんな変なもの挿れられずに済んだのに、尻を突き出したままの俺に、天道寺は容赦なくプラグを差し込んだ。
 嘘だろッ!
 こんなもの、四六時中嵌めて仕事が出来るか!

「天道寺さんっ!」
「大丈夫、ベルトは薄い皮ですから、ズボンの上からは分かりません」

 問題は、そういうことじゃ、ないだろっ!

「抜いて下さいっ! 嵌めたまま会社には行けません!」
「どうしてです? サイズが小さすぎますか? 俺のサイズに合わせると、仕事どころじゃないでしょうから、本当に塞ぐだけのものにしてます」
「これでも、十分仕事どころじゃありません!」
「慣れれば大丈夫です。徐々に大きなサイズにしていってあげますから。さあ、服を来て下さい。本当に遅刻しますよ。あ、勝手に外したら、真司と浮気したとみなしますから」
「…そん…なぁ…、俺、信用されてないってことですか?」
「拓巳は信用してます。もう、真司に股を開くこともないだろうって。ただ、あの獣(けだもの)が信用出来ませんから。それとも、拓巳は俺から心配されるのが、そんなにイヤですか?迷惑ですか?」
「…そうじゃ、ないけど…」

 しょうがない。そのうち、身体の方が慣れるだろう。

「それに、拓巳。それを嵌めていると、きっと素敵な身体になりますよ。括約筋の訓練にもなりますし。楽しみです」

 そう言われると…弱い。
 諦めて、俺は下着とズボンを穿いた。
 本当に、「栓」だ。
 ポンと蓋をされたような、自分がワインののボトルにでもなったような気がする。
 そこまで大きくはないが、確実に存在感があり、変に動くと感じてしまいそうだ。
 鞄を持ち、玄関先へと歩いていく。
 天道寺が言うように、慣れる日が来るのだろうか? 
 交通事故には絶対に遭えないぞ。救急車で運ばれ、服を脱がされた時には、看護師も医師も俺を変態と思うに違いない。

「拓巳、どうしました? 浮かない顔をしてますよ」
「…股が気持ち悪い…」
「気持ち悪いぐらいで良いんです。気持ち良かったら、仕事になりませんから。でしょ?」
「…行ってきます」

 靴を履き、天道寺に出がけの挨拶をする。

「行ってらっしゃい。寄り道せずに帰って来て下さい、拓巳」
「はい、そうします」

 早く帰って、外してもらわないと。
 今日から、新生活がスタートする。
 天道寺と心も通じ合ってから、初めての出社だ。目覚めた時は、気分新たに頑張ろうという気合いが入っていたが、今は、『変なもの装着して、仕事、大丈夫か?』という不安の方が強い。

「拓巳、スマイルです」

 その声を背中で聴き、玄関のドアを開けた。

『記念すべき、調教第一日目です』
 
 俺が通路に出て、ドアがバタンと閉まろうとしたとき、天道寺が小さく何かを呟いた。
 気にも留めず、尻の慣れない感触に戸惑いながら、俺は会社へと向かった。
 今日から、また、新たに衝撃的な日常が待ち構えているとも知らず、俺はマンションを出た。
                 

              (出会い編終了)  
古い作品なので、かなりアラが目立ちますが……最後までお付き合い下さりありがとうございました。


★「嘘だろッ(調教編)」
     出会い編で結ばれた天道寺と拓巳のその後。このサイト内での更新となります。Coming Soon〜〜♪
      4月からの更新予定です。
 始まりました〜。

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