嘘だろッ!49 嘘だろッ目次


 冷たい空気に晒され、舐められ口を開けていた孔が、少しずつ、落ち着きを取り戻していた。
 それと同時に、前の硬くなった部分も大人しくなりつつある。
 あと、数分で、完全に鎮火だと思っていた矢先、天道寺が戻って来た。またしても、手に、妙な物を持っている。
 ボロアパートに住んでいた頃の俺なら、天道寺の手にある物を見ても、料理の途中なのか、ぐらいにしか思わないだろう。
 しかし、今の俺は違う。寝室に、そぐわない物を持ち込んだ天道寺の意図が、分かってしまった。

「人参、生で食わせる気ですか?」
「飼う以上、餌は必要でしょ。そうじゃなくても、ゲテモノ食いみたいですし。お腹が空けば何でもOKな身体でしょ?」
 ゲテモノって、課長の事を指しているんだろうな。元恋人に対して、容赦ない形容だ。

「…どうして、俺はそこまで天道寺さんに、嫌われているんだ…、俺が…何をしたんだよ」
「何を言ってるんです? 久野君」
「俺が、あんたを襲ったこと、根に持っているってことなのか? 忘れるって言ってくれたじゃないかよぅ…」
「そんなこと、君が口に出すまで、忘れてましたよ。どうして、俺が君を嫌うのです」
「じゃあ、どうして、そんなモノまで、持って来るんだよ。それを餌だっていうのか? その餌をどこに与える気だよ…生で、俺に喰えとでも言うつもりか?」

 人参を持った天道寺が、ベッドに上がる。指で、窄みの周辺をなぞり、まだ収まり切れてないことを確認すると、また左右に尻を割った。

「俺はちゃんと言いましたよ。君が好きだって言いました。好きだから、今の君は許せない。真司と寝たことを隠そうとするし、簡単に俺を求めようとするし。疼くんでしょ、ココが」
「んぁあっ、」

 人参を先端からグッと差し込まれた。

「誰でもいいなら、これで十分ですよね」

 更に奥まで突っ込まれた。

「っ、止めてくれっ!」

 人間のモノとは違う硬く冷たい感触が、まだ腫れている内部の熱を奪い気持ち良かった。

「君の言葉は嘘だらけだ。止めて欲しくないって、ココが言ってますよ」
「…あっ…ダメッ…」

 天道寺の指が、人参を咥えこんだ境目をソフトタッチでなぞる。

「ほらね」

 天道寺の指が、今度は俺の先端に触れた。
 そこから、出始めた蜜を指で掬い取ると、俺の前に移動して、光る指を見せつけた。

「…天道寺だって…、嘘つきじゃないかっ!」
「俺が?」
「俺のこと、好きとか言った…そんなはずないのに…っ!許せないって、何だっ! 俺は…俺は……。最初に俺に嘘付いて、親切な大家の振りして変なことさせたくせにッ…簡単に俺を出て行かせたくせにっ! ……課長とだって、寝てるじゃないか…、なのに、俺ばかり、責めて、こんな格好…天道寺ッ!」

 ケツに人参を挟んだまま、もっと刺激が欲しいという欲求に耐えながら、俺のことをド淫乱みたいに言う天道寺に俺は必死で訴えた。
 さっきは聞き流してしまっていたが、天道寺は自分の行動の理由に「俺が好きだ」って言ったんだ。
 自分がされていることが、好きな相手にする事とは思えなかった。 

「哀しいですね…。ええ、分かりきってましたが…ホントの事を言った所で、君は信じてくれない。俺は君が好きですよ。馬鹿な中(あたる)を利用してまでも、手に入れようとした」

 吉田を利用? どういうことだ?

「人参で一人、楽しんで下さい。俺は君の此処から食べる食事の用意をしてきますから」 

 俺ので濡れた指を、俺の唇に這わせた。
 リップクリームを塗るように、俺の唇にヌメリを移すと、天道寺は部屋から消えた。
 身体も心も半殺し状態で、放って置く気なのか? 

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