嘘だろッ!40 嘘だろッ目次 |
「お前みたいなガキに、食指は働かないんだが…バイブもねえし、ちょっと待ってろ」 辛うじて、課長に掛けることはなかったが、もう思考もまともに働いてなかった。 課長の言葉の意味も深く考えず、待ってろ、と言う言葉に涙声で「待てません」と答えていた。 シュッ、シュッという音がする。 音が止んだかと思ったら、腿で止まっていたパジャマと下着を脱がされた。 「ほら、味わえ」 尻の丸みを左右に開かれ遠慮も無しに、大きな塊が疼く場所に埋め込まれた。 「んぁあああっ…イイッ…もっとぉお」 待っていたモノが宛がわれ、俺は歓喜の咆吼をあげた。そのモノが何であるかを深く考える余裕がなかった。 「凄いな。今日、特別凄いのか、これが普通なのか、気になるところだが…まあ、処理の相手としては悪くない」 「…あっ…、あう…、もっとしてっ…もっと…」 やっと与えられたのだ。誰とか、何とか、関係なかった。 あるのは切りのない快感だけ。バンバンバンと、激しく打ち付けられると、気持ち良すぎて、涙が溢れた。 「この、ド淫乱め。早くイッて、スッキリしろ。分かっているのか、明日は金糸堂だ。朝から仕事だ。ケツが痛くても出てもらうからな」 課長の言葉は、雑音にしかなってなかった。次から次へと寄せてくる快感に俺はすっかり溺れていた。 どのくらい続いたのだろうか。最後には喘ぎすぎて、声も出なくなり、いつ終焉を迎えたのかも分からぬまま、朝を迎えていた。 「起きろッ。遅刻するぞッ!」 臑を蹴られ、痛みで目が覚めた。少し疲れたような課長が俺の顔を覗きこんでいた。 「痛いじゃないですか……何時?…」 「五時半だ」 「…まだ、早い…じゃないですか。ふぁあ…寝させて下さい……」 「うるせぇ、サッサと起きろ。その顔じゃ営業出れないだろうが。今から起きて、浮腫(むくみ)とりのパックしやがれ」 女じゃあるまいし、何がパックだよ…眠いし…身体が怠い…… 「この、ド淫乱ッ、サッサと起きないと、裸のままベランダに吊すぞ! それとも、昨日の続きをやるか? 突っ込むぞ。起きろッ!」 課長の大声で、跳び起きた。 覚えのある鈍痛と気怠さが、身体を覆っていた。 「クションッ!」 「サッサとシャワー浴びて来い! 裸のままだと風邪引くぞ」 裸…? 「ひっ!」 「アホか。女じゃあるまいし、胸隠してどうする?」 素っ裸だった……思わず手で胸を覆ったが、課長の一言で、その手をシュンと縮まった局部に移動した。 局部がいつもより元気がない。その理由に、思いあたる節がある。俺のいる場所が、課長の寝室ということも、さっきから身体に響いている鈍痛も、全て一つのことに、繋がっていた。 「…アノ…、課長…、あれって、夢じゃ…」 「抽象的な言い方するな。久野が、俺にケツを振ったのも、俺のをぶっ込まれて悦んでいたのも、台所に野菜を求めて廊下を這おうとしたのも、お前に与えた部屋を精液塗れにしてくれたのも、全て現実だ。だから、さっさとシャワー浴びてこい。ほら、この浮腫とりのパック持ってけ」 「嘘…だろっ…、」 俺、課長と…ヤってしまった。 尻にまだ何か挟まったような感じがするのは、俺の尻が課長の一物を覚えていると言うことなのか…そして、この鈍痛…。 「雪に開通してもらってて、良かったな。そうじゃなかったら、お前、今日、立てなかったぞ。雪のもデカイけど、俺のは更に上だからな…それにしても」 課長がニヤッと笑みを浮かべた。 「お前のケツは、所謂(いわゆる)名器ってやつだ。お前自覚あるのか? 男のくせに、男を悦ばせる身体している。昨夜限定なのか、通常もそうなのか、是非今度じっくり試させてもらわないとな」 「結構です! 遠慮しときますっ!」 俺は慌てて浴室へと逃げた。 冗談じゃないっ! 何が、名器だ。あんな場所、名器もクソもあるかっ! そうだよ、それこそクソする為の場所じゃないか。 天道寺といい、課長といい…なんで、俺の周りには変態揃いなんだ? シャワーの水量を強にして、痛いくらいの水圧を浴びた。 頭皮が刺激され、頭がスッキリしてくる。 …でも、俺も同じ穴のムジナ、か。俺も天道寺の中に… 課長とのことを気にするべきというか、大きなショックを受けて当然のはずなのに、そこまでのショックはなかった。あるのは、変なドリンクを飲まされ、その結果、課長に掘られてしまったことへの憤りだけだ。 軽い。感情が軽い。天道寺の時は、物凄く葛藤があったのに、全くない。野良犬に手を噛まれたのと、さほど違いはない。 「ははは…」 身体を洗いながら、思わず自嘲した。 「…そうだよ…こういうの、処理って言うんだ……」 あの部屋で…天道寺の手伝いは、処理だと思ってやってたけど……処理じゃなかったんだ。 そうだよ、本当に、処理だったら、天道寺のことなんか…もう、とっくに… とっくに? なんだよ、とっくにって。 何でもない人間じゃないか。 とっくにも、何も、関係ないっ! だいたい、処理じゃなかったら、何だって言うんだ? 「あああああっ!」 自分の中のグチャグチャした思考を正したいのか誤魔化したいのか、シャワーの飛沫の下で、奇声を上げた。 「バカッ、朝っぱらから、変な声、出すな!」 洗面に来ていたのか、浴室の磨り硝子越しに、叱られた。 「パック、忘れるなよ。あと、ここに、軟膏置くから、塗っとけ」 「…はい」 「言い忘れてたが、俺の精液はお前の中にまだタップリ入ったままだ。力んで出しておけ」 衝撃の事実を残したまま、課長の気配が消えた。俺は浴室で、パックより先に、初の自力後処理をする羽目になった。 |