嘘だろッ!39 嘘だろッ目次


「久野? どうした?」
 
 俺はパジャマのボタンを引きちぎり、胸をはだけ、ズボンを中途半端に降ろし、半ケツ状態で、四畳半の部屋から廊下へ身体を半分出していた。
 くねくねと芋虫状態で、身体のの異変と闘っていた。
 熱くなったのは、身体の芯ではなく……男の身体の中心だった。
 熟睡していたはずの俺のソコがカチーンと、音がしたみたいに突然硬くなり、血流が一気に集まり、痛みで目が覚めた。夢精? と一瞬思ったが、夢は見てないし、射精はしてなかった。
 どうした、俺? と驚き、パジャマの中に手を突っ込み、触れた途端爆ぜてしまった。
 それが、一回目。
 そこで、鎮まれば、手とパジャマを汚したな…で終わるはずだったのだが…、爆ぜた後、直ぐに硬さを戻した。
 若いから…ってことはない。そりゃ、続けて二回連続は可能だが、何の刺激もおかずもないのに、勝手に身体が反応するのはおかしい。
 どうなってんだよっ、と思っている間に、今度はパジャマから顔を出した先端が布団をかすり、その刺激だけでまた爆ぜてしまった。
 二度あることは三度ある…ってことで、俺はそれから、三度、四度、ティッシュを取りに行く間もなく、布団と手とパジャマに自分の体液をぶちまけていた。
 狭い四畳半は、俺の匂いが充満していた。そんなことを気にしている間もなく、今度は雄の欲望じゃない部分で、身体が熱くなった。
 内臓…厳密には腸内…もっと厳密には天道寺を受け入れたことのある部分が熱い。
 そこが空洞なのがもどかしく、覚えのある感覚と刺激が欲しくてたまらない。
 何度もイった中心は、中途半端な硬度を保ったまま、ダラダラと透明な液を流している。
 内臓のもどかしさが高まるにつれ、皮膚全体が敏感になってきた。
 特に乳首が敏感で、パジャマが擦れるだけで、いらぬ快感が発生する。
 身体を捩ったり、中心を自分で弄ったり、胸を触ったり……藻掻いている間に、無意識のうちに、助けを求めようと、廊下に出ようとしていた…らしい。

「…か、ちょうっ…」
「えらい大胆な自慰だな。そんなもんは、部屋か風呂場でコッソリやれ」

 オナってるわけじゃないんだよっ。

「…ち、が、…う…ン…です」
「と言われてもな。その姿は、それ以外ないだろ。すげぇ、匂いが充満してるぞ。お前、何やってんだ?」

 転がる俺を跨ぎ、課長が部屋へ入ると、乱れた俺の四千円布団を捲った。

「おい、ひでぇな。こらっ、布団だけじゃなくて、床にまで飛ばしてるじゃないか…」

 部屋の心配じゃなくて、俺の心配して下さいっ。
 もう、限界だった。
 今ここに、キュウリでも人参でもナスでもあったなら、俺は迷わず自分のケツに突っ込んでいるだろう……あるっ! 
 台所へ行けばある。
 俺の身体は、台所へ向きを変えた。

「こらっ、久野、どこへ行く! ジッとしてろ。お前が這った場所、ナメクジの通った跡にみたいに、なってるじゃないか」
 
 先端から落ちる液が、擦れて床に付着しているようだ。

「お前、変なドラックでもやってんじゃないだろうな?」
 
 そんなもの、やってない……あっ、あれだっ!
 そこで、俺は初めてこの身体の異変の原因に思い当たった。スタミナドリンクだ。あれ以外、有り得ない。

「…か、ちょう…の、せいダッ…ヒドッ」

 頭部にゴツンと打撃を受けた。課長の拳骨だ。

「バカ言え。俺が何した? は?」
「…変な…ドリンクッ、」
「ありゃ、美肌成分入りのスタミナドリンクだ。そりゃ、精力剤の成分も含まれているが、催淫剤じゃない。少し息子が元気になるぐらいだろうよ。お前のその様子だと、ドリンクが原因とは思えない。他に何を口にした?」

 …あとは……、

「…ビール」

 また、頭部を殴られた。

「人の留守に、コッソリ酒盛りか? イイご身分だな、久野。多分、ソレが原因だろ。ドリンクの成分とアルコールが結合して、変な成分でも生まれたんじゃないのか? …ソレか…」
 
 もう、原因究明はどうでもいいから、俺の行く手を阻まないでくれ〜〜〜。
 内部が痛痒い……自分じゃ掻けないんだから…何か挿れさせてくれっ

「極度の欲求不満で、ドリンクの成分に過剰反応しているのか、どちらかだろ。で、お前は何がしたいんだ。廊下を這ってどうする?」
「…キュウリ…ッ、…人参ッ…ケツッ…」  

 更に三発目の拳骨をくらう。

「食べ物を粗末にするな。ったく、余程、雪に可愛がられていたんだな。普通は、そんな場所、男が疼くはずないだろ、しょうがないヤツめ」

 身体が宙に浮いた。
 何事かと思った時には、俺の身体は、課長の肩に担がれていた。

「てめぇ、俺に掛けるんじゃねえぞ」
「ひぃ、か、ちょうっ…おろして、…くだ、さいっ!」

 不安定な肩の上で、俺は振動に耐えなければならないのか。これ以上の地獄はない! 
 大股で課長が歩く。運ばれた先は、課長の寝室。
 ドサッとベッドに落とされた。

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