嘘だろッ!11 嘘だろッ目次

 
 ガウン擬きに恐る恐る袖を通し、ベッドから降りた。
 前を手で隠したい衝動に駆られたが、それこそ男らしくないだろ、と耐えた。

「今日は自分で動いて下さい。俺のモノが元気になるように。まだ舌使いは期待してませんが、どうしたら俺が気持ち良くなるか想像して動いて下さい。久野君も男だから分かるでしょ?」
 
 分からないと男じゃないと言われているようだ。
 負けてたまるかっ、これぐらい直ぐにマスターしてみせるっ!
 跪き、まだ大人しい状態の天道寺の一物に手を添えた。 
 俺が寝ている間に入浴を済ませているのか仄かにボディシャンプーの香りが漂う。
 昨日はナマコのイメージで最悪だったので、今日はもうイメージ無しだ。
 天道寺の息子を可愛がってやるぜッ! ああ、泣かせてみせる、ざまあみろ、とガキ大将の心境で臨んだ。
 …結果…俺は頑張りすぎた。
 ああ、頑張った。言われたとおり、自分が弱いところは天道寺も同じだろうと舌を使ってみたり、嘔吐くのを我慢して喉の奥まで入れたり、顎が外そうになるくらい頑張った。
 天道寺の息子が成長しだすと、どう感じているのか想像でき、自分が興奮してしまった。
 そして、追い打ちをかけるように、顎を動かす度にシャカシャカとガウンの布が俺の先端を擦る。
 やんわりとした感触が、ゾクッ、ゾクッと微電流を身体に走らせた。

「久野君…いい感じです。一日で凄い変化ですよ…身体を移動させますので落とさないように」
 
 両手で頬を挾まれた。そのまま天道寺がゆっくりとベッドに腰を下ろす。
 俺は膝をついたまま前のめりになった。

「これだと、久野君のを可愛がってあげられますから」
 
 可愛がる? 

「俺のを咥えて勃たせるとは、光栄ですね。久野君のは俺に任せて下さい」
「!」
 
 ナニするんだよっ! 
 止めてくれ。足で俺のを弄るなっ!
 先端の滑りを確かめるように、天道寺の足の親指が触れてきた。

「口が疎
(おろそ)かになってますよ? どちらがイかせるの早いか競争しましょうか?」
 
 天道寺の足が手のように器用に動く。
 足の指が裏筋をなぞったりくびれを這ったり、玉まで弄ぶ。
 それにガウンの擦
(こす)れる、何とも言えない感触が襲う。
 意識してないと、天道寺を泣かせるどころか俺の息子の方が泣き出しそうだ。

「んグッ…、ン…」
 
 早くイかせないと俺がヤバイ。
 滅茶苦茶に舌を這わせ動かし、ヤツの生気も精気も吸い取るようにしゃぶった。
 そんな俺の股間で、更に卑猥な動きを続ける天道寺の足が、これでもかと挑発を繰り返す。
 塞がれた喉から、鼻に掛けて自分でも嫌になるくらいの甘い鼻濁音が抜ける。
 感じていることを悟られたくないのに、勝手に声が抜けるし、快感が奔る度に身体がビクッとしなる。
 もうこうなりゃ、せめて天道寺より先にイくことだけは避けたい。
 俺はがむしゃらに、襲ってくる快感と戦いながら、人生二回目のフェラを頑張った。
 そう、人生とは虚しいものだ。
 頑張れば勝てるという程甘くはなかった。
 それは営業職とも似ている。
 忍耐…それが俺には足りなかった……
 負けた。完敗だった。
 天道寺が俺の口内で爆ぜる前に、俺は天道寺の足の甲と借りていたガウンに乳白色の独特の匂いを放つものをぶちまけてしまった…

「なんて素晴らしいんだ。久野君、君は最高です。あぁあ、君のその痴態に俺も、限界です」
「げほっ」

 そして、俺は人生二回目の精液を味わった。

「ごめんなさい…その…俺…あっ、直ぐに拭きますから!」
「大丈夫ですから。舐めてみます? 自分の味も知りたくないですか?」

 俺の体液が掛かった足を天道寺が俺の鼻先に持ってきた。

「…遠慮しときます」
「そうですか。知っておくのもいいと思いますけど」

 じゃあと、天道寺が指で自分の足の甲に付着した俺のモノを指ですくい取ると、それを自分の口へ持っていった。

「うわっ、止めて下さいっ! 天道寺さん、そんなもの舐めちゃ駄目です」
「ご馳走さま。悪くない味ですよ。久野君みたいに少しまだ青さはありますが、好みの味です」
 
 こんなモノに、好みもヘッタクレも無いだろう! 俺の舐めてどうするんだよ…手伝いに関係ないじゃないか。
 自分がスッキリすれば終わりじゃないのかよう…
 裸を見られるより自分の精液舐められる方が数倍恥ずかしいってことを学んだ。

「俺、シャワー浴びてきます。汗かいたし、あと、これ洗濯しないと…手洗いで大丈夫ですか?」
「それは俺が洗濯するから気にしないで。籠に入れておいて下さい」
「でも、俺が汚したんだし、俺が洗います」
「変にごしごしすると、生地が傷みますから、久野君より俺が洗った方が安心です。久野君より俺の方が洗い物は上手だと自負してます」

 そこまで言われたら従うしかない。

「わかりました。籠に入れておきます」

 天道寺のいう「手伝い」を手伝って、天道寺の家事の仕事増やしている俺って、結局役に立たない人間のような気がしてきた。
 ガックリときて、自分が裸だということも忘れ、下着とパジャマを取りに自室に戻ることもせず、風呂場に直行してしまった。
 いろんな事が情けなく、頭からシャワーのお湯をやけくそで浴びた。
 シャンプーが残り少ないので、髪がゴワつくのを覚悟で石鹸で洗い、そのまま身体も洗い、それでも風呂場から出る気がせずシャワーのお湯に打たれていた。後で歯磨きもするが、取り敢えず口の中に残る天道寺の味を排除したくて、口を開け上を向いてシャワーのお湯で濯
(すす)いだ。
 何で俺のアパート燃えちゃったんだろう。 
 どうして俺の三百万は焼失なんだよ…
 何で俺は此所にいるんだろう……
 ああ、しかし『お手伝い』以外は天国なんだけどなぁ…
 ブツブツと心の中で独り言を呟(つぶ)いていたら、腹がキュルとなった。
 痛い。
 更にキュルキュルと鳴る。
 痛い…痛いッ…この痛みは…
 確か、夕飯後に薬飲んだよな…アレってやはり症状が出てから飲まないと効かないってこと? 
 予防にはならないってこと?
 それか寝たから、時間が経ちすぎている?
 痛い、痛い…クソッ…あぁああ…
 吉田は個人差があると言っていたけど、それは俺の腹の具合じゃなくて、天道寺の精子の元気具合じゃないのか? 
 あいつの精子が俺の腹の中で暴れてるんだっ! 居もしない卵子求めて暴れまくっているに違いないっ! 
 激痛に襲われ、大きな白いオタマジャクシが目の前を横切った。
 幻影だ…わかっているけど…あぁあ、もう駄目だっ!
 慌ててシャワーを止め、脱衣場に出ると乱暴に水滴を拭いた。
 そのまま浴室を飛び出ると隣のトイレに駆け込んだ。
 はあ〜、間に合った…ケツいてぇよ。
 二日連続の下痢っていうのもな〜、俺、栄養失調になったりしないだろうか?

「久野君、大丈夫ですか?」
「…ええ、何とか」
 
 天道寺が様子を見に来たらしい。バタバタとトイレに駆け込む音で俺の変調に気づいたんだろう。

「またですか」
「はい、またです。折角薬を買って頂いたのにすみません」
「謝る事じゃないですよ。お腹まだ痛みますか?」
「もう、大丈夫です。あの…そこをどいてくれませんか? 俺出たいんですけど…服着てないので」
 
 風呂場から直行したので裸なのだ。もう裸は見られているが、裸族ではないので抵抗がある。

「わかりました。どうぞ出て下さい」
 
 居なくなったのだろうか? 
 水洗レバーを押し、「天道寺さん?」と呼んでみたが返答がなかったので、俺はドアを開けた。
いないのか、と個室を出ると

「うわっ!」
 
 ドアが開くのに邪魔にならない場所、ようはトイレの真正面から少し浴室よりの場所に天道寺が立っていた。
 全裸で…

「可哀想なことをしましたね。身体冷えてないですか?」
「て、天道寺さんっ!」
 
 抱きついてきた!
 全裸の天道寺が全裸の俺を、ガシッと自分の胸に抱き寄せた。

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