嘘だろッ!調教編9 嘘だろッ目次

「…拓巳、――なんて格好を…」

 孔をまさぐり自慰行為に没頭していた俺の前に、突如現れた天道寺。
 目を見開き、俺の顔ではなく、指を突っ込んだ状態の孔をガン見している。

「わっ、違う!」

 突然のことに頭が混乱し、何が違うのか分からないけど、口から飛び出した言葉はこれだった。
 そんな俺に天道寺は冷たく

「ご機嫌よう、久野君。失礼」

 と言い残すと、クルッと俺に背を向けた。 
 バタンと会議室のドアが閉まり、天道寺の姿は消えた。この間一分も掛かってないと思う。

「幻?」  

 ――だったら、良かった。でも違う。

『オイ、雪! 待てよ!』

 幻じゃないのは、外から聞こえる課長の天道寺を呼ぶ声で分かる。 
 ――画像を見て、飛んできたんだ。
 どうしよう…、マズイ…
 アレは怒ってるぞ…。
 だが、俺は課長からはやられていない。
 最悪が課長にやられることだとすると、そこは免れた。
 貞操帯は外されたが、それ以上はなかった。
 自分で指を入れただけだ。
 が、それを課長の前でやったことはバレバレだから…やはり、最悪なのか?
 貞操帯も自ら進んで外したと誤解してるかも知れない…。
 あの画像ではどっちにもとれる。
 どうしよう…これは本当にヤバイぞ。
 さすがに俺の興奮も鎮火した。
 前も萎れ、孔の中に挿れっぱなしだった指をこれ以上動かす気にもなれない。
 今俺がなすべきことは、天道寺にこうなった経緯を説明することだろう。
 勤務時間を終わってから、などと悠長なことは言ってられない。
 『ご機嫌よう、久野君』
 ご機嫌ようだぞ!? 
 拓巳じゃなくて久野君、だぞ!
 デザイナー吹雪としてならそんな言葉を発してもおかしくはないが…、この会議室には俺しかいないのに…
 クソッ! それって裏を返せば恋人として接したくないってことだろ? 
 追いかけないと!
 ――着替えが…。
 汚れた衣類は課長が持ち去った。
 フリチンで社内を彷徨いたら、間違いなく会社は首だ。
 この際だからそれも有りかも、と投げやりな考えが一瞬頭を過ぎる。


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