嘘だろッ!調教編4 嘘だろッ目次


「…どうして、ここなんですか」

 連れて行かれたのは、ジュエリー部門の一課が使う会議室だった。

「距離の問題だ」
「…どうして、椅子の上じゃないんですか」

 降ろされたのは長テーブルの上だ。

「そんなの決まってるだろうが。こっちの方が押し倒し易い」
「はぁああ?」
 
 押し倒すって、どういうことだ!
 訊くまでもない。認めたくないだけで、この先の展開は想像が付く。

「吉田」

 課長が長テーブルの横に立つ中に目配せをする。その意味さえ分かってしまう。

「拓巳、悪く思うなよ。これでも心配してのことだ」

 嘘だ! 好奇心だけだろっ!
 背後から両肩を掴まれ、無理矢理上半身を倒された。
 膝から下だけがテーブルから垂れている形だ。

「朝から恥ずかしいやつだ、久野。なんだ、この膨らみは? 生地にシミが出来てるぞ」 

 課長の手がズボンのベルトに掛かる。
 振り払おうとした俺の手は中に掴まれた。

「吉田、しっかり押さえておけ」
「はい、もちろんです」

 もちろん、ってなんだ! 
 お前は俺の親友じゃなかったのか?
 色々あったが、俺はお前を許しているというのにっ!

「中ッ! 課長ッ!」

 俺の二人への抗議は見事に無視され、ベルト、下衣の順で下半身から手際よく引き抜かれた。

「…すげぇな、雪のヤロウの気合いというか執念というか…」

 課長の視線が痛い。中の視線も感じる。
 二人の視線が貞操帯の上を這っているのがよくわかる。

「愛です」

 間違ったことは言ってないつもりだが、課長と中が同時にプッと吹き出した。

「愛? 愛??? お前、これが愛か? 久野、馬鹿か…あぁあ、こりゃ、いい」

 課長がゲラゲラと大笑いを始めた。

「拓巳、多分違うと思うぞ」
 
 中は同情めいた口調だった。
 どちらにせよ、双方に否定された。
 何故だ?

「遅刻の原因がこれか。こんな物装着させられて、愛と思うお前の単細胞さは一体どこから来るんだ? あ?」
「天道寺は俺を害虫から守ろうとしているんだっ!」

 その害虫はもちろんあんただ、と課長を睨んだ。

「って、雪に言われて、それを信じたんだ。この大間抜けが」
「え? だって心配だって…。獣が信用できないからって…」
「ふん、俺対策って言われて信じたのか。やはり久野は顔だけだな。俺対策なら、どうして鍵が付いてないんだ? ベルトで固定しているが、コレ、簡単にとれるぞ」

 と、課長の手が貞操帯を外しに掛かった。 


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