嘘だろッ!調教編3 嘘だろッ目次


「ふん、心が籠もってない。まあいい。どうせ、今から説教だ。二階の会議室へ行くぞ」
「…説教って、俺、遅刻以外何も…」

 今俺に必要なのは、課長の小言に付き合うことではなく、トイレに駈け込むことだ。

「何か言ったか?」

 今日二度目の課長の睨み。
 だが、今ここで屈したら、それこそ大変なことになる。

「言いました!」
「そりゃ、結構」

 嘘だろっ、スルーかよ、聞けよ、俺が言ったこと聞き直せよ! と慌てている俺など知ったことかと事態は進んでいった。
 行くぞ、と課長に右腕を掴まれ、 

「早く行こう」

 と何故か嬉々としている中に左腕を組まれた。

「課長、何してるんですかっ! 中も離せよっ!」

 二人が強引に俺を歩かせようとする。
 そんなことされたら、ここまでの苦労が水の泡じゃないかっ!

「サッサと歩け、グズ」

 なかなか足が進まない俺に課長が苛立って言葉を投げつける。
 俺だって歩けるものなら颯爽と歩きたいさ。

「無理なんですって」
「な〜にが無理だ。いい年した男が甘えるな」

 甘えているわけじゃない。だいたい、今更課長に甘える理由がない。

「拓巳、遅刻してるんだから、もっと機敏に動けば?」
 
 って、中、お前が言うな。
 必死で内股に力を入れて耐えているが、限界だった。

「…本当に、駄目なんですっ、――ぁあ」

 咄嗟に口を押さえたかったが、両腕を二人それぞれに取られてそれすら出来なかった。
 課長より先に中の顔を見た。
 洩れた声の種類にこいつが勘付いているとは思えない。
 案の定、怪訝な顔をしているが、多分気付いてないだろう。
 が、課長が気付かないはずがない。
 恐る恐る視線を中から課長に移した。
 端正な顔に下品極まりないにやつきを浮かべていた。

「久野、朝から楽しいそうだな。まさか遅刻の理由が下半身事情ってことはないよな」

 課長の言葉に、中が俺の股間部分を見た。
 中にも俺の下半身に何かしら起こっていることが分かったに違いない。

「…あたり、…前じゃ、ないですか。嫌だな…課長…ははは」
「当たり前か。だったら、普通に歩けるよな」

 鬼だ、悪魔だ。

「…ははは、……はははは、…無理です」
「ふん、理解ある上司を持ったことに感謝するんだな」

 何を言い出すかと思えば、課長は俺の腕を放し、中にも腕を外させ、それからわざとらしく

「久野、大丈夫か? 貧血なら早く言えっ!」 

 周囲に聞こえるように大声で叫びながら俺を抱き上げた。

「課長!」
「いいから、遠慮するな。医務室まで運んでやる」
「そうだよ、拓巳。ここは甘えた方がいい」 

 だから、お前が言うなって!

「降ろして下さい。大丈夫ですから!」

 訴えたが、降ろしてくれるどころか、抱えている腕を上下に動かし、俺に刺激を与えようとしていた。
 もう課長は俺の中に異物が嵌っていることまで察知しているようだ。
 さすがに種類は特定できてないと思うが。

「早く別の場所に移動した方がいいんじゃないのか?」
 
 小声で課長が俺に聞いてきた。
 ここまで来たら、課長の言う通りにするしかない。
 敗北感を味わいながら頷いた。  


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