嘘だろッ!調教編27 嘘だろッ目次 |
「ごめんなさい!」 俺は慌てて頭を下げた。 「何についての謝罪ですか!」 更に怒らせてしまったようだ。 「…それは…、その…、俺が天道寺さんの気に触ることを言ったみたいだから…」 「ええ、触ってます。拓巳の言動の一つ一つに一喜一憂しています。振り回されています。拓巳、俺が何に喜んで何に落胆しているか分かりますか?」 ここで答えを間違えたら、それこそ天道寺を落胆させることになるだろう。 「…分かりません」 だが、嘘は付けない。 「だったら、謝るな」 天道持らしからぬ乱暴な物言いに、俺は驚きすぎて思考も身体も硬直してしまった。 天道寺がそれ以上何かを言うことはなく、口を半開きで固まっている俺の手を引っ張り歩き出した。 結局、天道寺がどうして大声をあげたのか分からないままだった。 「はあ…良かった…」 天道寺の寝室に入った途端、思わず本音が溢れた。 それまで天道寺を怒らせたことが気になって仕方なかったというのに、温泉に浸かったときの「あ〜いい湯だ」のように口からポロッと出た。 天道寺が振り返り、ジロッと俺を見た。 些か軽蔑の眼差しが含まれていたが、特に何も言われなかった。 寝室に入ってからも天道寺は俺の手を掴んだままだった。 ベッドに辿り着くと、そうするのが当たり前かのように天道寺が俺を抱き上げ、ベッドの上に置いた。 この一週間、どれだけこのベッドの上で過ごしたか。 ベッドだけじゃない。 天道寺の側を離れたことなどなかった。 トイレにまで付いていくぐらいの、甘い二人の時間があった。 だが今の二人の間にはこれっぽっちも恋人同士としての甘い空気は流れていない。 裸になり格好だけは元に戻ったが、…あ、足りない。大事なアレがない! 「あのぅ…」 裸の俺に毛布を掛ける天道寺が手を止めた。 「何ですか?」 「…俺は…まだ…、天道寺さんの恋人でペットでいたいんです」 「だけど他の男とも遊びたい、とか言うつもりですか」 「言いません! 俺が好きなのは天道寺さんだけです! 本当です。信じて下さい」 「言葉には意味がないと、今日ほど痛感したことはありませんが。それでも信じろと」 あんな画像を課長が送信するから悪いんだ! 「はい、信じて下さい」 「わかりました。夕飯の支度をしてきます」 流された。 わかってなんかいない。 信じてないんだ。 「首輪!」 出て行こうとする天道寺の後ろ姿に、俺は叫んだ。 |