嘘だろッ!調教編24 嘘だろッ目次


 その数分後、この上ない羞恥を俺は味わうこととなった。

「こちらです」

 ドタドタドタと、数人分の足音と一緒に天道寺の声がした。
 哀れな身体は何事かと身構えることもできない。
 迫り来る足音に、動けない身体はそのままで、気持ちだけ後退りした。

「…! 嘘だろッ!」

 足音の正体は、救急隊員だった。 

「拓巳、安心して下さい。もう大丈夫です」

 大丈夫じゃないッ!
 俺、バスタオルを掛けただけの裸じゃないかっ!
 この姿で救急車って有り得ないだろッ!
 
 だが裸だからイヤだとは言い出せない状況だった。
 事務的に俺の状況をチェックする救急隊員の二人のお兄さん方を前に、裸がどうとか訴えるのは変だと思われそうで言えなかった。
 担架に乗せられる時、俺はギャッと悲鳴をあげてしまった。
 痛む身体を持ち上げられたからじゃなく、唯一俺の身体を覆っていたバスタオルがヒラリと宙に舞ったからだ。
 俺の悲鳴に何事かとお兄さん達が手を止め俺を見た。
 真っ裸の俺を。
 いつもの天道寺ならきっと俺の裸を第三者に見せようとはしないはずだ。
 きっと今だって俺の悲鳴の意味に気付き、バスタオルをすぐに掛けてくれただろう。
 だが、天道寺は自分のせいで俺がこうなったと動揺していて、人目に晒されている俺の裸を隠そうとはしてくれなかった。

「痛いでしょうが、ベルトで固定します」 
「裸のままでですか?」

 言い出すなら今だと俺は頑張った。 

「寒いですか?」

 いや、そこじゃないでしょ。
 だが、背に腹は替えられない。

「…はい。このままだと寒いです」
「ソコは大丈夫ですか? 痛みで腫れているのかもしれませんが……痛みで、って…クッ」

 今まで事務的に通していたお兄さん達が顔を見あわせる。
 そして二人とも口が開かないように歯を食いしばっている。
 笑っているのだ。
 必死で笑いを堪えている
 何のことか分からなかった。
 裸のことを今になってと思ったが文脈からして違う。
 そして、動揺していた天道寺の顔が、一気に険しくなった。
 

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