嘘だろッ!調教編23 嘘だろッ目次


 「大丈夫ですか!」

 さすがに天道寺も驚いたらしい。
 シャワーノズルを放り、慌てて俺の側に駆け寄ってきた。

「…大丈夫…じゃ…ない…」

 尻から腰にかけて激痛が走る。

「動けますか?」

 天道寺が俺を抱き抱えようとした。

「ヒィッ 無理!」

 少し身体が揺れただけで冷や汗が出るような鋭い痛みが走る。

「…分かりました」

 何が分かったのか俺には分からない。
 ただ激痛に苦しむ俺にも分かるほど、天道寺の顔が真っ青だった。

「ちょっと連絡してきます」
 
 どこに? と問う前に青い顔の天道寺が俺を残して浴室から消えてしまった。
 すぐに天道寺は戻って来た。
 手には大判のバスタオルが握られていた。

「このままでは風邪をひきます。痛くても我慢して下さい」

 天道寺が俺の身体の水分を、ゆっくり丁寧に拭
(ぬぐ)ってくれる。
 天道寺に悪いと思っていても痛みで顔が歪むのを隠せない。

「…こんなことになるとは…、俺のせいです…」 
「違…う…から…」 

 いや、違わない。
 だけど、俺が突進しなければ滑らなかったわけだし、元々は課長のせいだ。
 課長が貞操帯を外し、画像を天道寺に送信したりするからだ。

「違いません」

 否定した俺の言葉を天道寺が否定で返す。
 きっぱりと言った言葉とは反対に、天道寺の顔は今にも泣きそうだった。

「泣かないで下さい」

 まつげがキラッと光っている。
 今にも天道寺の目から涙が溢れそうだ。

「泣いていません」

 またもや否定された。

「ちょっと失礼します」
 
 泣き顔を見られたくないのか、天道寺がまた浴室から消えた。


 NEXTBACK  

嘘だろッ目次 novel