嘘だろッ!調教編18 嘘だろッ目次


「松野は、殺しても大人しく死ぬようなタマじゃありませんよ」
「じゃあ、生き埋めでも構いません。コンクリートに詰めて、海底にでも沈めて下さい」
「コンクリート詰めですか。やはりドラム缶が手っ取り早いですかね」
 
 専務が悪乗りを始めた。このまま続くと『提案』より課長殺人計画が本格的に始まりそうだ。

「いい加減にしろよ。二人して言いたい放題だな」
 
 ――課長本人もこの場にいたんだった。
 課長が苦々しく漏らすが、専務も天道寺も発言どころか課長の存在自体を無視した。

「ドラム缶でも棺桶でもなんでも構いません。なんなら、運搬用のトラックとクルーザーを用意しますよ」

 ――天道寺、本気だ。目がマジだ。
 ただの例えだと思っていたけど、違う。
 課長をそこまで憎んでいるのか? 
 それとも俺の為に??? 
 ダメだ、天道寺に殺人の片棒を担がせるわけにはいかない。

「ダメだ。やめてくれよ…やめて下さい、吹雪先生。天、吹雪先生が犯罪者になるのは、絶対にダメだ。課長なんかの為に、天道…吹雪先生が犯罪者になる必要はない!」

 天道寺の正面に立って、訴えた。
 その俺を天道寺は一瞥しただけで、邪魔です、と俺の身体を払った。

「久野君落ち着きなさい。本気にするとは、君は素直だね」

 専務! 本気です。
 天道寺は、本気だったんです!

「冗談はさておき、私の提案はですね、久野君を展示会だけの営業スタッフにし、二課での仕事は展開での営業販売のみで出社はなし。それ以外は、吹雪先生専属のスタッフとして先生の身の回りのお世話係兼秘書。これなら展示会でしか松野と接することはない。しかも展示会の間は忙しい。接することはあっても、ゆっくり話をする暇もないでしょうし、この男は数字の鬼だから、稼げる久野君をそこから連れ出してどうこうは考えられない。心配なら、吹雪先生が同行して頂いても構いません。いっそ、して頂いたら数字が更に伸びるでしょう」

 ―――そんな話…そんな都合の良い話…そんな特別待遇…いいんですか!?
 本当に、専務良いんですか??? 
 これなら、きっと、天道寺も、

「お断りします」

 え? 
 今、天道寺は何て言った?

★宇都木専務は「嘘じゃないッ!」でデザイナー吹雪誕生から課長の松野と天道寺に絡んでいます。過去を二人の過去をよく知る人物です…。
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