嘘だろッ!調教編16 嘘だろッ目次


 「…俺が連れ込んだんじゃない。俺が撮らせたんじゃない。だが俺が遅刻しなかったら…あんな反応しなかったら…それがなかったら、いくら課長でも…」

 駄目だ。
 これじゃ、庇っているように聞こえてしまう。

「ちょっと、いいか?」

 俺のグダグダぶりが目に余ったのか、課長が割り込んできた。

「悪いのは俺や久野じゃなくて、吹雪大先生サマだ。ということで、責任があるのは雪、お前だ。吉田もそう思うよな?」
「俺ですか? 俺に振らないで下さい!」

 と中
(あたる)が後退る。

「お前もあの場に居たんだから、誰が一番悪いのか、誰に責任があるのか、判断付くだろうが。俺か? 久野か? 雪か? 言ってやれ、お前の従兄弟殿に」
「…それは……、その……」

 チラ、チラッと天道寺の顔色を中が窺う。 
 その中を天道寺がギッと睨む。

「……課長、俺には…言えません」
「つまり、それが答えだ。雪だと思っているから言えないんだ」

 勝ち誇ったように課長が言った。

「――何を勝手なことを」

 天道寺の声が怒りで震えている。

「勝手? は? さすがに偉い先生は、解釈も一流だ。一流に歪んでるよな。出勤する久野の身体に突起付きの貞操帯を装着させたのは誰だ? それが原因だろうが。俺は遅刻の原因を追及しただけだし、仕事どころか、歩行もままならない久野を俺は助けてやっただけだ」
「止めて下さい!」

 課長が天道寺を責めるのが、俺には許せなかった。

「天道寺は…吹雪先生は悪くないッ!」

 天道寺の足元に屈んだまま、課長に吠えた。

「専務、悪いのは俺なんです。どんな処分も受けますから、首だけは勘弁して下さいッ。仕事好きなんです。顔だけかもしれませんが…布団を売る仕事に誇りを持ってやってきました!」

 今度は専務に頭を下げ、必死に訴えた。

★宇都木専務は「嘘じゃないッ!」でデザイナー吹雪誕生から課長の松野と天道寺に絡んでいます。過去を二人の過去をよく知る人物です…。
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