嘘だろッ!調教編15 嘘だろッ目次

 天道寺はというと、まるで俺などいないように、無視を決め込んでいる。

「今、吹雪先生から話を伺っていたのですが、弁明がすることがあれば、先にどうぞ」

 厳しい顔で言われた方が良かった。
 優しく穏やかな口調で、専務が俺達に促す。
 笑顔なのが怖い。

「弁明? そんなもの必要ね〜だろ。雪が勝手に大騒ぎしているだけだ。だいたい、仕事に行く人間に変な道具を装着したバカが弁明すればいいだけだ。俺は上司として、アホな部下の指導した迄だ。そうだろ、宇都木専務」

 口火を切ったのは課長だった。
 馬鹿馬鹿しいと言わんばかりの横柄な態度だ。
 その顔を天道寺が、綺麗な顔を歪めて睨み付けている。

「指導で部下の下半身の画像を撮るのか、お前は…全く、これが他の社員だったら間違いなく訴えられていたぞ」
 
 って、俺が訴えないことを前提じゃないか! そりゃ、訴えないけどさ…。
 専務はどこまでのことを知っているんだろう。
 俺と天道寺のことは、バレバレだろうけど、俺が課長に掘られたことも、知っているとか……。
 可能性大だ。

「久野君、君は何かあるかな?」

 ある。色々ある! 
 専務がある程度のことを知っているなら…今、一番に弁明しないとならないのは―――

「はい! 天、…吹雪先生!」

 専務じゃなくて、俺の方を向いてもくれない天道寺にだ。  
 天道寺の前に回り込み、足元に屈む。
 両手を床について、

「申し訳ございません! 全部俺が悪い! 俺が俺が…遅刻したから…。俺の身体がその…反応したから…あんな物に…だから、俺が悪い」

 本当は課長が悪いんだ。
 だけど、ここで課長を持ち出したら、一緒にいさせたくない天道寺は俺をクビにする。

「言いたいことは、それだけですか?」

 俺を見ずに、天道寺が冷ややかに尋ねた。

「…はい」
「へえ、悪いのは拓巳なんですね。この鬼畜を庇うんですか? じゃあ、あなたがこの男を会議室に連れ込んで、あんな写真を撮らせて、私に送り付けたとでも言うつもりですか」 

 庇う? 違う!
 でも、何と言えばいいんだ?
 ここで違うって言えば…俺は間違いなく職を失う!
 だが課長を庇っていると思われたら、天道寺を失う――それは嫌だ!


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