嘘だろッ!調教編11 嘘だろッ目次

 もうこうなったら、首を覚悟してこの姿でここを出るしかないっ!
 大事な部分が少しでも隠れるよう、シャツの裾を引っ張り、ドアに向かう。
 ノブに手を掛けた瞬間、ドアが勝手に開きバランスを崩し前倒れに……倒れなかった。
 代わりにドンと身体が何かにぶち当たった。

「熱烈歓迎は嬉しいんだけど、今はそれどころじゃないぞ」
 
 その『何か』が、かなり慌てた口調でぶつかった俺の身体を揺さぶった。

「…中
(あたる)?」

 中の顔を認識した途端、ああ、神様はいたんだ〜〜〜と、思った。
 呼び付けようとした相手が、現れたんだ。神様が、俺の為に運んでくれたに違いない。

「そんな目で見るなよ、拓巳」
「そんな目?」
「誘うような目。色目使ってるじゃん」
「使うはずないだろ! 来てくれて助かったから、ホッとした顔になっただけだ」
「な〜んだ。安心した。って、それどころじゃないんだって。宗兄が大変なことになってるんだ」

 中にしては珍しく言葉に真実みがある。
 つまり、天道寺に何かあったか、何かをしたか、だ。 

「大変だけじゃ分かんないだろ! 詳しく話せ」
「宇都木専務に凄い剣幕で詰め寄ってるぞ。拓巳を二課に配属した責任を取れって。拓巳を会社には置いておけないって」
「はあぁああ? 天道寺は俺に怒っていたのに、どうして専務が出てくるんだ? 関係ないだろ!?」
「…直接拓巳とはなくても、あの専務、元は一課の課長で宗兄と松野課長のこと知ってるし、とにかく拓巳も来いよ!」

 中もかなり慌てていたのだろう。
 俺の腕を引っ張った。
 そもそもの立ち位置が、ドアの直ぐ手前だ。
 ちょっと待て、という間もなく俺は廊下に出された。

「中、俺、履いてないんだぞ!」
「いい、それどころじゃないだろ。クビになるかもしれないじゃないか」
「だから、この格好でも首になる!」
「え?」

 中が視線を下げた。

「…なんで、まだ?」

 そこで、中も俺の下半身がどういう格好になっているのか理解したらしい。
 中が出て行ったときと同じく衣類を纏っていないってことを。
 そして、中が認識をしたのと時を同じくして……

「うそぉおおお!」

 耳に届いた言葉。
 廊下に出た途端、もう第三者に目撃される羽目になった。
 それも同じ課の後輩、村上一に。

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