人間未満 6人間未満目次


「どうするかは、知ってるよね?」
 
 男が千明の手首を掴み、自分の一物を握らせた。
 熱く太くそして既に硬くなりかけていたものを触り、この部屋に来て初めて心臓がドクンと呻った。

「これを君の中に挿(い)れるから。苦しいよ?」 
 
 さっきから、ノーと言わせたい質問をされている気がする。

「…挿れて、滅茶苦茶にして、俺を楽にしてよ……。楽にしてくれるって… この部屋にそのために来たんだよね?」
「そうだった」
 
 男の手が千明の下着に掛かる。

「少し腰を浮かせてごらん」
 
 言われるままにすると、あっという間に下着を剥かれた。
 男の指先が、縮んだ先に触れる。ピンと弾かれ、初めて他人の手に触れられた中心がジンとした。

「気持ち良くしてあげるから」 
 
 まずは全体を見せてと、脚をM字に開かれ、膝を抱えるように命じられた。
 男が身体をずらし、医者が診察するように、千明の細部を確認する。
 感触を確かめるように指が秘部を隈無く這う。

「ここだからね。本当にいいんだよね?」
「…おじさん、何度もしつこい…。早くしてよ」
「そりゃ、初めての子には確認しとかないとね。あとで無理矢理だったって言われても困るし」
「いわない。痛くてもいい。ココが痛いよりはいい」
 
 片手を膝から外すと、胸をバンバンと叩いた。
 叩きながら、この男が今から自分にしようとしていることを、隆司は女としているのかと、切なさが湧き上がってくる。

「泣いてるの?」  
「早くしてっ。ココが裂けそうだから、早く楽にしてよ…おじさん……」
 
 よしよしと、頭を軽く撫でられた。
 男が頭を千明の性器の上に持っていくと、小ぶりのそれを口に含んだ。
 生温かい温度と唾液の滑りを感じただけで、千明の中心に芯が出来る。
 その芯を育てるように、男が舌を使って追い上げる。
 初めてのフェラチオだというのに、千明には羞恥心も湧き起こらず、初めて味わう人によって与えられる快感に身を委ねていた。

「ぁあ…うっ……」
 
 あっという間に限界になり、それを感じた男が茎を吸い上げるように、口を窄めた。

「…でるっ…」
 
 ドク、ドク、ドクと三回に分かれて、千明の若い精が放出された。
 全て男の口の中だった。  

「少しはスッキリした?」
「…嫌じゃないの…、その…そんなの…」
「別に、良い味だよ。じゃあ、本番行こうか。痛くて泣く方が君にはいいみたいだから」
 
 男の目が獣に変わった。
 一瞬、恐怖が千明を襲った。やっと恐怖が千明を襲う。
 その怖さを自分は待っていたのだと思う。優しくされたいわけじゃない。
 ボロボロになりたいのだから。
 解熱剤の座薬さえ挿入されたことのない千明の直腸に、男の指が入る。

「ウッ」
 
 初めての内臓を弄られる感覚に無意識に身体が逃げようとする。

「すぐに慣れるさ」
 
 男の空いている方の手が逃げる千明の腰を押さえつける。 
 男の指の侵入を拒んで内壁が顫動していたが、それを無視して進む指に身体の方が逆らうのを止めた。

「ほらね。大丈夫だろ?」
 
 直ぐに指が増やされ、入口を広げるように動かされ、外気が自分の身体の内部に入るのを感じた。
 もういいだろと、男が自分の勃起したモノにゴムを着けると、千明の孔に押し当ててきた。
 メリッと先端を押し込まれて、ヒダが裂ける痛みが走った瞬間、心の痛みから逃げることばかりを考えていた千明の頭に冷静さが戻った。

  …俺、今、何を? 
  何、コレッ! 

「いやだぁああああっ!」
 
 千明の手が男を押し退けようとする。
 入りかけた先端が一旦千明の身体から離れた。
 男が暴れ始めた千明の両手を押さえつけると、ビシッと千明の顔を引っぱたいた。

「ヒッ」
 
 叩かれ、口の中に血の味が広がる。

「もう、逃げられないよ。諦めてもらうしかない。酷いことされたくなかったら、大人しくしてろ」
 
 男が怒った表情で千明を睨み付けた。
 だから、念を押しただろ? と男の目が語っていた。

「ひいっ…いたぁあああっ、」
 
 ガクガク震えだした千明の中に、男の昂ぶりが一気に突き立てられた。

「やだっ、抜いてッ…いたッ…ひぃ…」
 
 千明の抵抗など無視されて、男が容赦なく千明の細い腰を犯した。

「…やだっ…やだ……隆……たす…け…て……」
 
 縋るように千明の口から出た名前は、忘れたいと思った隆司だった。
 自分を苦しめるのも隆司なら、今まで自分を守ってくれていたのも他ならぬ隆司だった。

「…りゅう……じ……」
 
 涙で霞む目には、自分を犯す男の顔が隆司に映った。
 助けを求める手が空を彷徨うが、その手が取られることはなかった。

「…た…す……け…・・・・・」


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