人間未満 45人間未満目次


 
「触られて、勃たせてんじゃねえ。男なら誰でもいいのか、千明? バッカじゃあねぇの」
 
 隆司の手だと思うだけで、千明は感じていた。ベルトが根元から外される度に、ブルッと茎が揺れた。
 羞恥が千明の顔を火照らせる。

「ぁあっ、う」
 
 尿道に差し込まれた栓を力加減を知らない隆司が乱暴に抜く。
 痛みと共に、ゾワッと電気が走るような快感が千明を襲った。

「信じられねぇヤツだな。こんな所弄られて完勃ちか? 俺が気持ち良くなる前にお前が気持ち良くなってどうするんだよ。便所のくせに生意気だ」
 
 隆司がベッドから降りた。
 便所からも降格なのかと、千明は落胆した。便所でも無視されるより、マシだった。
 が、直ぐに隆司は戻って来た。

「そんなに、ソコが好きなら、これでも突っ込めよ。後ろはもう解れただろう? 自分でこれ入れてみろ」
 
 隆司の手には、綿棒が一本握られていた。
 いつも差し込む栓より、綿棒の先はかなり太い。

「…隆司、それは…」
「無理とは言わないよな? 入れろ。親父の為なら何でもするんだろ? 俺の無理もきけるよな? だって、俺たち元親友だもんな?」
 
 千明の目の前に隆司が綿棒を突きだした。
 受けとれ、と隆司が威圧的な目で千明を睨む。
 千明が受けとると、隆司が満足そうな顔をした。

「早く入れろ。動画撮って親父に送ってやる。さっさしろ」
 
 隆司が携帯を構えた。
 千明は綿棒の先を恐る恐る自分の蜜口に持っていくと、穴の上に当てた。

「…できない。隆司、恐い…」
 
 本当に恐かった。
 雅紀に命令は恐いが大人だけに、限界を知っている安堵感がある。
 痛めつける行為も、例え壊されても手当してもらえるという安心がある。
 隆司にはそれがない。
 こんな先の太いのを挿して大丈夫なのか、恐怖が身体を這い上がってくる。

「やれ」
 
 隆司の機嫌が悪くなる。

「うっ…」
 
 怒らせまいと千明が自分の恐怖心に蓋をした。

「出来るじゃねえかよ。もっと奥に入れろ」
 
 大きさの割りには痛みは少なかった。

「んっ…ぁあっ、」
「そんな穴に綿棒突っ込んで、色っぽい声だ出してんじゃねぇ。よし、送ったぞ」
 
 携帯の送信ボタンを押した隆司が携帯を終う。 
 自分の息子が自分の奴隷にさせたことを見て、雅紀はどう感じるのだろう…お仕置きの材料になってしまうのだろうか…
 そんなことが千明の頭によぎる。

「そのまま、ソレ、抜くなよ」
 
 千明の痴態に隆司も興奮しているらしい。
 制服の前が脹らんでいた。
 千明に四つん這いになるように命じると、隆司も下衣だけ脱ぎ、バックから千明の中に突き進んだ。
 優しさの欠片もない隆司との交わりの中で、千明の隆司への想いが下降線を描くことはなかった。
 逆に身体を繋げたことと、自分の性癖がばれたことで、隆司への想いと欲が、一層高まっていった。

「…あっ、あぁ…、隆司、隆司ッ…」
 
 …好き…、隆司を誰にも取られたくない…
 便所でも、なんでも、名称はどうでもよかった。
 軽蔑でも憎悪でも、隆司が自分を抱いてくれるなら、戻れない友人の座などに未練はないと、自分に言い聞かせていた。
 隆司に好意はなくても、隆司の身体だけは自分を必要としていると思えることが、千明には救いだった。

「…うっ、隆司っ、綿棒…取って…」
 
 回を重ねるごとに、隆司もコツが分かってきたのか、千明の弱い所を掠めては反応を見るようになった。
 だが、決して自分より先に千明がイくことを良しとしない隆司によって、毎回千明は生殺しのような状態にさせられる。

「駄目だ。俺がイくまで、挿してろ」 
 
 あくまでも自分本位な隆司が千明の状態などお構いないし腰を振る。千明の先走りが綿棒を膨張させ、吸収されない分が伝ってシーツに落ちていた。
 中途半端な堰き止めがむず痒く、隆司の激しい動きで内側から湧き上がる快感が追い打ちをかけ、千明を苦しめていく。
 この苦しさが隆司により与えられたものならば、耐えることが自分の思いの深さなのだと、自己陶酔に千明は浸っていた。

「…んぁっ、…う…、あっ」
「…この中だけは、女以上だよ…お前それワザとか? キュウキュウに締め付けやがって…んあっ、堪ンねぇ…」
 
 ドクドクと千明の中に注がれ、ズルッと隆司が引き抜く。 
 この瞬間が一番千明は嫌いだった。
 自分が隆司の用済みになる瞬間のように感じるのだ。
 実際、千明は用済みだった。
 自分さえ吐き出せば後はどうでもいいと言わんばかりに、さっさと着衣を始める隆司の横で、千明は自ら入れた綿棒を抜き、そして自分の手で軽く茎をさすり、果てた。

「あと始末しとけよ。俺、授業戻るわ」

 果てたばかりの千明を残して、隆司は保健室から出て行った。
 …もう少し一緒に居たいと思うことは……許されないよな……
 千明の精液が散ったシーツに更にポタッ、ポタッと染みが出来る。
 …なんでだよ。便所でいいんだろ、便所で、何で涙が出るんだろ……
 ははは、と乾いた笑いを無理矢理作り、シーツの上に転がっていた陰茎用のベルトをまた装着すると、イったばかりの敏感な尿道に栓を挿す。

「ぁあっ」
 
 そうだよ、俺は雅紀さんの奴隷なんだ。
 隆司の隣には居られないんだ……だけど…
 ブルブルと頭を振る。
 それ以上何があるって言うんだ。
 何もない。
 千明はズボンを穿くと、保健室から自分と隆司のしたことの形跡を消すために、シーツを取り替え、汚れたシーツを丸めて焼却炉へ放り込んだ。。


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