人間未満 41人間未満目次


 
「…隆司…いきなりは無理だ…それに…ゴム付けた方がいい……」
「何? レクチャーでもしてくれるわけ? 妊娠の心配があるって言うつもりじゃないよな?」
「…アレ、してないし…綺麗な場所じゃないから…ゴム付けた方がいい……」
「アレって、何だ? ハッキリ言え。俺はお前達のおナカマじゃないんだ。言わなきゃわからねえだろっ」 
「…浣腸…洗浄……」
 
 雅紀には平気で言える言葉も、隆司に口にするのは、憚られた。

「浣腸? すげ〜な。そんなことまでしてるのか。だろうな。こんなとこ突っ込むんだから、でも、俺ゴム付けね〜。生が一番なんだよ。生が。終わってから洗えばいいだろ。射精なんか、クソするのと同じだろ。ゴム付けたらお前のなかに出せないだろうが。ちゃんと便所として、なかに放ってやるからな」
「…せめて…ローション…じゃないと…くっ」
「ゴチャゴチャうるせ〜んだよ」
 
 隆司が挿入で千明の言葉を遮った。

「…いたぁああっ…」
「処女じゃあるまいし、何が痛いんだか。イイの間違いだろ」
 
 隆司だって痛いはずなのだ。
 受け入れ体勢になってない内部は、異物を押しだそうとキュッと締まっているに違いない。

「もっと、啼けよ。イイ声だせよ。じゃないと俺が萎えるだろ」
 
 女とやる要領で隆司が腰を使う。
 入口が切れたのか、血の匂いが微かに漂い、滑りが良くなった。

「血まで流して、処女を装おう気か? 男って何度掘られても偽バージンぶれるってことか」
 
 バンバンバンと腰を打ち付けられる。
 痛みが酷くて、ベルトが食い込んでいた千明の中心は萎えてしまった。
 痛みのなか、千明は何とか隆司を感じようとした。
 罵声と軽蔑を浴びせられ、絶望の淵にいてもおかしくない千明だったが、自分の中に隆司がいると思うと、隆司の全てを感じたいという欲が生まれてくる。
 中学時代から隆司が好きだった。
 隆司に抱かれる女達に嫉妬してきた。
 その場所に自分が居たかった。
 友達としての座を失って、隆司の身体が手に入ったのかと、哀しくて嬉しくて、千明の頭の中はグチャグチャだった。

「――あっ、あぁ…」
「イイ声でてきたじゃねえか…もっと」
 
 ホモ嫌いの隆司と、身体を合わせる日が来るとは思ってなかった。
 激しく突き上げるだけの隆司に、自ら腰を浮かせ振り、自分の感じやすい場所を擦り付け、隆司が悦ぶ内部を作り上げる。
 自分が感じれば、内壁も隆司のモノを悦んで迎えるに違いないし、痛みからも解放されるはずだと、千明は懸命に腰を振った。

「…あうっ…あ、あ…、」
「何だ、中がドロドロしてきた。へぇ〜、こうなるのか…なるほどな…これに、変態は、はまるってわけか。適度な締め付けがガバガバの女よりイイってことか……もっと、感じてみせろよ」
 
 自分の努力の結果、一旦萎えていたベルトで締め付けられている前が、また苦しくなった。

「…隆司…ベルト…うっ…」
 
 ベルトだけではない。
 尿道口に嵌め込まれた栓も苦しみを与えていた。
 どちらも外さなければ、千明はイくことができない。

「駄目だっ、外させない。便所が射精する気か? 俺だけイけばいいんだよ。お前がどうなろうと、知ったことか。外して欲しけりゃ、親父に電話でもして頼め」
 
 雅紀に、隆司に抱かれているから、外させてくれと言えるわけもない。

「…隆司…、あ…うっ…お願いっ…」
 
 中の滑りが良くなり、要領を覚えた隆司が内壁を擦りあげてくる。
 前を堰き止められ、吐き出せない欲望が千明を苦しめた。

「……りゅう…じ、あぁ…もう…がまん…できないよ…うっ……お願……い…」
 
 隆司を悦ばせたくて、身体を張れば、そこには痛みとは別の地獄が待っていた。
 懇願しても、隆司は千明をイかせる気がないらしい。 
 これ以上、感じてしまえば狂いそうだった。 
 しかし、一旦感じ始めた身体は、隆司が与える刺激を全て残さず吸収する。
 苦しくて、涙が溢れる。喘いでいた声も出なくなる。
 必死でシーツを掴み、飛びそうになる意識を繋いでいた。

「…、……、……」

  …隆司、苦しい…助けてっ………


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