人間未満 39人間未満目次


 
「どうした? 何か言えよ、千明。俺がホモ嫌いだって知ってるよな。でも、お前、そうなんだろ。しかも相手は『まさき』だ。俺の親父だ」
「なっ…」
「どうして、知ってると思う? 見たんだよ。昨日、お前達が親父の隠れ家でヤッてるとこ。お前目隠しされてて、気が付かなかったけどな。客の相手もしてたよな? すげ〜よな」

 昨日のアレを隆司が見ていた!?
 男達に弄ばれていた様子を?
 尻にバイブを突っ込まれたところを?
 雅紀さんと抱き合っていたところを?

「嘘だ…隆司が、あそこに来るわけない…」

「はは。千明、墓穴掘ってるぞ。お前、今自分の発言の意味よく考えてみろ。あそこってどこだ? 親父の隠れ家だろ。お前があの場所知っていること自体、何かあったと言ってるのと同じじゃないか。俺は用事があって、行きたくないのに、しょうがなく行ったんだ。そしたら、お前が全裸でバイブ突っ込まれてた。親父にはねだってたよな? 俺のショック分かるか? 俺の親友は、ホモで変態だったんだもんな。そんなに男がいいなら、俺にやらせろ。何せ俺は今、恋人に去られ、親友と思っていたヤツが自分の親父と出来てたという、これ以上ないくらい不幸なんだから。可哀想な俺をお前が慰めてくれるんだろ? 身体を俺に差し出すぐらい、千明には簡単だろ?」

「…隆司…お前…ホモじゃないじゃないか…嫌いなんだろ…なのに…そんな…ヤメロッ!」
「千明は頭悪いな。何度言ったら分かるんだ? ああ、俺は同性愛とかホモとかゲイとか虫酸(むしず)が走るぐらい嫌いなんだ。お前達のようなヤツラは人間じゃねえ。猿以下だ。だったら、俺の性欲処理でもいいじゃん。便所になれ」
 
 辛辣な隆司の言葉に、千明は自分がもう隆司の友人ではなくなったことを悟った。
 無視されるのと、便所とどちらが辛いのだろうか…いつかはバレるとビクついていた千明だったが、バレてしまえばもう、ビクつく必要もないのだ、と変に冷静な自分がいた。
 ただし、まだ最大の秘密は悟られてはいない。
 千明が隆司を好きだということ。
 それだけが救いかもしれない。
 それは決してバレることはないだろう。
 千明が自分から口にすることは、ないのだから。

「すげぇな、その跡。前に屋上でも見たけど。親父に吸い付かれた跡散らして、ホント、千明変態だな。他にもあるよな。お前等が人間じゃない証拠が」
 
 シャツのボタンを外し終わった隆司の手がズボンに掛かる。
 ファスナーを開けると、千明の性器を引っ張りだした。

「こんなもの装着して、まともじゃないだろっ。お前、トイレでこれいちいち外して用を足しているよな。それだけじゃない。学校でもオナってるよな?」
 
 尿道に栓を差し込まれ、陰茎には三本の皮のベルトが渡っている。
 それを隆司に晒す日が来るとは思ってもいなかった。
 


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