人間未満 21人間未満目次


 
 「千明、どこだ?」
 
 何だ、こんな所で寝てやがる。
 屋上に上がってきた隆司が千明を見つけた。
 寝顔だけだったら、小学生だな……初めて声掛けたときと、全然変わらない。

「…ん〜…、あぁ……」
 
 おいおい、色っぽい寝言だな。
 千明でも淫夢とか見るのか?
 そりゃ、見るよな。シャツが汗で貼り付いて、イヤらしいっていうんだ。
 乳首、赤いの丸わかり。
 おい、尖ってないか? 
 マジ、イヤらしい夢?
 制服の白いシャツの上からでも、雅紀に弄られた熟れてきた千明の乳首はハッキリと形が分かった。
 普通にしていれば、生地の弛みで隠れているが、汗で貼り付いたシャツは形状と色を浮き立たせていた。
 隆司の中で悪戯心が芽生えた。
 隆司の指が千明の胸に伸びる。確実に一点を捉えると、軽く挟み、コリコリと感触を確かめるように動かした。

「…あっ…止めて…」
 
 悪戯されている当の本人は、夢の中の出来事と思っているのか、目を開けることもなく、吐息交じりの声を漏らした。
 女に弄ってもらう夢かよ。
 千明も男だっていうことか……
 図に乗ってしまった隆司が更にしつこく千明の乳首を弄ぶ。

「――あ…あ、まさ…き…さん……」
 
 千明の口から漏れた名前に、隆司の手が止まる。同時に隆司の思考も止まった。
 はは、まさか……、千明が俺の親父の名前知るはずないか…女でもある名前だし…あぁああ、脅かすなよ…あいつは最低なんだ、でも、千明、どこの「まさき」と? 
 …俺に内緒……言えない相手? 
 だから、この間、変なこと言いだした? 
 どういうことだ?
 チェリーじゃないってことか? 
 こういう声出すぐらいだ…年増女に入れ込んでるとか?

「チェッ、千明の癖に生意気だ。これが、こいつの隠し事ってことか? 言えば、いいのによぅ。なんだよ、こいつ」
 
 隆司の指が再度、千明の胸に伸び、今度は抓り上げた。

「ヒィッ。…まっ…」

 ――さきさん、と続けようとした千明の目の前に、隆司の顔があった。
 ゴクリと唾液と共に言葉を飲み込んだ。





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