人間未満 19人間未満目次


 
 隆司の父親の前でしているのかと思うと、背徳感と羞恥で一人でやるときより、早く沸点に到達した。

「そうやって、指を使うんだ。隆司の顔は浮かんでいるのかな?」
「…っ…はっ…浮かんで…ないっ…あっ…もう…でるっ…」
 
 嘘だった。
 閉ざされた視界にハッキリと隆司の顔が浮かぶ。
 彼にされたいという願望なのか、自然に欲情してしまう、ただ一人の相手だからなのか。雅紀ではなく、隆司の顔だけが浮かんでいた。

「千明は嘘つきだね」
「ひっ!」
 
 イく寸前のところで、根元をギュッと握られた。
 そんな経験は千明にはない。

「…イかせてっ…、雅紀さんっ!」
 
 初めて堰き止められる苦しさを味わった。

「正直に言ってごらん。大好きな隆司の顔を浮かべたんだろ?」
「…はい…あっ、…ァあぁ…」
 
 返事をした瞬間、縛めを解かれ千明は雅紀の見ている前で一気に爆ぜた。
 濡れた下腹を雅紀が柔らかな布で拭く。身体を起こされ、目を覆っていた布を外された。

「千明、泣いているのかい? 可愛い子を泣かすっていうのも、悪くないね。ここ、触ってごらん」
 
 雅紀が自分の股間に千明の手を誘導した。ズボンの下で、男のそれは形が変わっていた。

「君にしてもらうから」
「…今日はここまでって、雅紀さん、言った…」
「そうだね、千明にするのは、さっきので終わり。でも、私のをしてもらう分は別だ」
 
 雅紀がズボンの中から赤黒い中年男の一物を取り出すと、千明の顔にソレを近付けた。

「ホテルで、してあげたこと、覚えているよね? さあ、今日は千明が私のをしゃぶる番だ。口を開けて」
「…出来ません…許して下さい」
 
 バシッと、左の頬に雅紀の掌が飛んだ。

「ばらすよ? 口答えは許さないって言ったけど? 千明は私の何になったか、よく考えなさい」
 
 叩かれた頬がジンジンする。

「千明は私の何?」
「…愛…人…です」
「お利口さんだ。さあ、口を開けなさい。千明の痴態でこうなったモノを鎮める責任があるだろ。大きく口を開ける」 
 
 千明が開けた口の中に、雅紀が猛ったモノを押し込んできた。ムッとする雄の匂いと、苦み走った味が口中に広がった。
 咥えるだけで、顎が外れそうで、苦しかった。

「辛くでも、歯をたてないように。あとは何もしなくていい。私がする」
 
 雅紀は千明の頭を両手で挟むと、前後に振り自分の良いように動かした。喉を突かれ、嘔吐(えず)きそうになり、目から涙が流れた。

「一滴残らず飲みなさい。零したら、お仕置きするから」
 
 口の中の肉棒が、ピクピクッと動くのが分かり、雅紀の「うっ」という声と共に、口の中に初めての味のネットリとしたものが広がった。
 想像以上に不味(まず)くて気持ち悪くて、胃液が上がってきそうになったのを、無理矢理自分の唾液と一緒に押し流した。 
 生きた金魚を飲み込むのと、どっちが辛いだろう…、そんなことが頭によぎった。



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