人間未満 18人間未満目次


 
 「身体は正直だね。それとも、千明がただ単にいやらしいだけか…」
 
 煽っているのが、千明にも分かった。それでも、反応しているのは事実で、誰にでも感じる淫乱なのかもしれないと、情けなくなった。

「哀しそうな顔しない。いやらしい身体は素敵じゃないか。喜びなさい、千明」
 
 慰めにならない。
 喜べるはずもない。
 隆司が嫌う種類の人間へとなっていくのを感じ、熱を帯び始めた身体とは反対に、心が冷えて行くのを千明は感じていた。

「ちょっと待っていなさい」
 
 布団の中に一人残された。
 直ぐに、雅紀が戻って来た。手には羽根と幅十センチ位の細長い布を持っていた。

「視界を閉ざされた方が感じるって知ってる?」
 
 雅紀が千明の目を布で覆い、千明から視界を奪った。

「エアコンの温度上げてきたから、布団剥ぐよ」
「ひっ…」
 
 掛け布団が千明の身体から消えた。咄嗟に女子のように、胸の前を腕で覆い、身体を横に傾け丸めた。

「くっ、可愛いというか、なんというか。千明、身体を伸ばしなさい。手は身体の横。仰向けに真っ直ぐ伸ばす」

  雅紀の手が千明の足首を掴むと無理矢理伸ばされた。
 胸を覆う手も解かれ身体の横に置くように命じられる。
 素っ裸に目隠しだけで敷布の上の千明の全身を、雅紀が鑑賞しているのが分かる。
 見えないことで、感覚が研ぎ澄まされ、雅紀の視線の動きが分かるのだ。

「いい拾い物をした。育てがいがありそうだ。視線を感じるだけで、尖らせるとはね」
「ひぃっ」
 
 何の事だと思っていたら、左右の乳首を抓られた。

「女の子にしてあげよう。この間触ってなかったから、今日はタップリ愛撫してあげるよ」
 
 キュッと縮んだ乳首を雅紀が舌で転がす。時には噛まれ、軽い痛みともどかしさが甘い快感となって、身体を駈けた。

「女の子より反応がいいし、早いよ。これはどうかな?」
「ァあっ…イやっ…擽ったイッ…雅紀さん…止めてッ…ひッ…」
 
 胸の愛撫を終えた雅紀が次にした行動は、羽根で千明を撫で上げるということだった。 
 中年の男は、人間のどこが弱いか経験上知っていた。確実に弱い所から攻めてくる。
 触るか触らないかの微妙なタッチで、脇腹、太腿、胸、下腹、そして性器まで擽られ、痛みより酷い責め苦を味わっているようだった。

「くすぐったい所が千明の性感帯だよ。君の場合、全身だね。やはり淫乱だ。隆司になんてもったいないよ、君は」
「…お、ねがいっ! …もう止め…ひぃ…」 
 
 視界が遮られているので、次の攻撃への心の準備もできない。
 身体を捩るが、その度に雅紀に押さえつけれた。

「今にこれが好きになるよ。してしてって乞う程にね。千明の身体は既にこの羽根が気に入っているみたいだけど」
 
 雅紀が千明の手首を掴み、千明の中心まで千明の手を運んだ。
 先端に触れると、濡れていた。

「凄いよね。もう、こんなになってる。タラタラっと溢れているよ。そのまま、自分で抜いてごらん。どうやって抜くか、私に見せなさい」
 
 人に見せるような行為ではない。
 まだされた方が恥ずかしくない気がした。
 雅紀の顔が、自分の股間の近くまで来ていることは、彼の息が掛かることで分かる。
 千明の自慰行為を間近で見るということらしい。

「見せてくれたら、今日はここまでにしよう。これ以上はしないから、ちゃんと射精しなさい。隆司の顔でも思い浮かべればいい。いつもはそうじゃないのか?」

 触れられたくないことに容赦なく触れてくる。

「早くしなさい。じゃないと、後ろを弄ってイかせるけど、いい?」

 恐る恐る千明が自分の性器を掴む。

「隆司の代わりに見届けてあげるから、いつもしているように、しなさい」
 
 ゆっくりと扱き始めた。


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